ドイツでの経験2

その他

前回までのあらすじ 上司の何気ない一言からドイツ行きを決めたウチ青年。彼は全くと言っていいほどドイツ語が喋れなく、研修先を見つけるにも一苦労。そんな中履歴書を片手に飛び込み営業を始めます。そこで出会った一軒のパン屋さん。遂に初研修日が決まりました。この先どうなるのか!?

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初日

初の研修日を告げられ達成感を噛みしめその日は帰宅しました。このとき一瞬そういえばどうやって当日中に入るんだろう??(そういう説明は一切なかった)と不安がよぎりましたがその時はそんなことよりこれでスタートラインに立てたという思いの方が強かったのです。

当日・・・予感的中。当然店のお客さん側の扉は閉まっていました。ぐるっと店の周りを探し明かりのついているところを発見して中に入ろうとしても鍵がかかっている・・・

どうしたものかと思い窓ガラスを強めに叩きハロー!ハロー!と連呼したのはいい思い出です。笑

作業場には面接?してくれたオーナーシェフ、若い男の人、おじいさん、自分よりも若い女の子が働いていました。シャツとエプロンを借りて研修が始まりました。

一番始めに教わったのは生地を機械にひたすら通していく作業です。これはプレッツェルというドイツで有名なパンを作る工程の一つでした。見様見真似でやっていると、粉が少ないだとか多いだとかもっと早くやれとかいきなり若い男の職人に注意され萎縮・・しかもデカい溜息までつかれて首を横に振って不満をめっちゃアピールされました。

異国、怖っ!!

この時はそれしか思ってなかったですね。

ただ自分が望んでこの状況に来たということでやる気に満ち溢れていましたので精神的には全く影響なかったです。

窓から見える景色に光が差し込んでくる頃、販売員さんが出勤して開店準備をします。この時朝6時。程なく近所の方がゾロゾロと朝食のパンを買いに来る光景を見て

あぁここまでやっとこれた。と思いました。

11時になりシェフから呼ばれベラベラっと何か言われましたが、何言ってるか分からないので困った顔をしていたらジェスチャーで終わり!の動きをされました。そしてポケットから何か取り出し私に差し出したのは

10ユーロ

涙が出そうになりましたね。お金いらないって言ってたのにくれたことは勿論、初めての異国の地で対価をもらえたこと、不甲斐ない動きをしてたのにくれた事。

(仕事ができてないからたった10ユーロなんだよっていうツッコミはなしで!!笑)

この時の10ユーロ札はいまだにとってあります。

日々の生活

一ヶ月の語学学校生活も終わりが近づき住むところに困っていることをシェフに相談したらパン屋の上の階にある屋根裏部屋を使っていいと言われたのでお引っ越し。

みなさんが想像しやすいのは魔女の宅急便のワンシーンでしょうか?それと全く同じといっていい感じの部屋でした。因みにいいもんではないですよ・・・

窓は隙間開いてたし、壁も汚くて最初に行ったのは壁のペンキ塗りからですから笑

ただシェフは私にベッドを買ってくれどっかから冷蔵庫を持ってきてくれなんとか暮らせる体制は整いました。

トイレやシャワーは共同のものを使い洗濯、乾燥機(ドイツでは外に干すのが禁止)は店のものを使わせてもらえる事に。こうして研修生活が進んで行きました。

1日の流れも段々とわかってきて少しずつですが何を聞かれてるのかも判るようになってきました。(当然仕事が終わった後自主勉強してます)後はシェフが思いっきりわかりやすい単語を選んでくれてるというのもありましたね。冷凍庫に生地を運べ!と言うのは「アラスカ!」という言葉になってましたし、ホイロ(発酵室)に生地を入れる時は「アフリカ!」と言っていましたから笑

本当に気さくでオーバーリアクションな面白いシェフでした!

一方この頃一番辛かったのは日本語が遮断された事でしたね。勿論ですが当時スマホなんてありませんし、機械音痴の私はPCも持っていない。日本語を使う時は休日に語学学校で知り合った日本人と食事を一緒にする時くらいでした。ですので日本の友達から2.3ヶ月に一度届くビデオレターは何よりのご褒美で、これを見る時は必ず休日の前の日、ビールを大量に買い込んで一人上映会をするのです。

みんな応援してくれていたのが何より嬉しかった!

貴重な経験

日々の研修での経験の他にもシェフには様々な体験、経験をさせていただきました。

夏には湖に連れて行ってもらって水遊びしたり、オクトーバーフェストに連れて行ってもらってビールをたらふく飲んだり、冬に入る前には豚を一頭買ったから解体してもらうぞと言ってソーセージ作りを見学させてもらったり、ドイツ伝統の仮装パーティーに参加したりどれもこれも日本にいたときでは体験出来ないことばかりでした。

またパン作りの方でも私の経験になるからと仕事仲間に話をつけてくれドイツのパン工場に2週間行かせていただく機会もありました。ここでは機械化がかなり導入されていて現在の日本の設備と比べても遜色ないと言っていいほど進んだ場所でした。(つまり日本のパンに対する考え方は世界に10年以上遅れていると私は思っています)その導入されている機械の一つにレオンがあるのだから日本人にとっては皮肉な話です。(レオンは日本の製菓製パン用機械の代表的な会社の一つ)

工場での研修が終わってからのある日シェフから「日本のパンを作ってくれ」と言われメロンパンを作ったこともありました。向こうでは日本のように何かを包み込むとか貼り付けるという作業があまりないためなんでこんなめんどくさいことするの?と聞かれて苦笑いした思い出があります。そんなメロンパンですがなんと販売してくれたんです!日本語で私がプライスカード作ってなんだか嬉しかったですね。

そしてこの話はここで終わりではなく続きがあるんです。

メロンパン発売から1ヶ月後くらいに朝販売員さんから「昨日あなたが帰った後、あなたを探している人がいたわよ」と言われました。誰だろうと思っていると2、3日後まだ私が働いているときにその人は再びパン屋を訪ねてきたんです。

ん・・・誰??笑

そこには見知らぬドイツ人が・・・戸惑っている私にその人は日本語で話しかけてきました。

どうやら話をしたらその人はドイツと日本のハーフで、現在はドイツに生活拠点を移したとのこと。たまたま帰ってきてパン屋を覗いたら日本のメロンパンが売っていて、なんでこの町にメロンパンが??となったみたいです。それで私にコンタクトを取って来たという面白い出会いがありました。

この男性とはその後も一緒に飲みに行ったりイベントに行ったり日本の話をしたりと親しくさせてもらいました。

そして一年という時間はあっという間に流れドイツでの生活も終わりが近づいて来ます。

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