パン屋に勤めていると当たり前のようにスチーム機能のついたオーブンが装備されていますが、家庭用のオーブンだと機能がついていたとしても威力が弱かったりして失敗の原因になりがちです。本日の記事ではそもそもスチームを何のために入れるのか?入れないとどうなるのか?家庭でやる場合はどうしたら良いかを解説していきたいとおもいます。
スチームって何で入れるの?
もしかしたらパン作りをする時にスチームを入れるということを知らない人がいるかもしれません。
食パンや菓子パン惣菜パン等は塗り玉をして焼成しますので使う必要がないと言えばないですね。
スチームを使って焼成する場合のパンというのは所謂ハード系のパンと言われるものが多いです。
お家でパン作りに慣れてきた人でハード系に挑戦している方も最近はとても増えてきました。だからこそ最後の焼き方で「あーこれ、もったいないなー」と思うものも少なくないのでしっかりした焼き方をマスターしましょう。
スチームの入れる目的は生地のボリュームを最大限にする為です。
熱したオーブンの扉を開けてその空間に手を入れてみてください。長時間入れてるともちろん火傷しますが数秒なら、暑いかなー程度だと思います。
しかしその状態でスチームが入ると全く状況が変わります。一発で大火傷します。
サウナに入っても人の身体は火傷しませんよね。サウナの平均温度は85℃〜95℃だそうです。中には100℃超えるものもあるんだとか・・
では何で火傷しないんでしょうか?
その秘密は湿度にあります。サウナで例えるなら湿度は5%程度。からっからですね。
気体と液体だと熱伝導が全く違います。液体に比べて気体は20倍近く熱を伝えにくいんです。もちろんその他に汗による保護というものがありますがここでは違う話になりますので置いておきます。
サウナ好きの方なら知っていると思うのですが【ロウリュ】というものがあります。熱したサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させ、それをタオルでバサッ、バサッとやることで体感温度を上げて発汗作用を促すサウナの入浴法の一つです。
私はスチームの目的を説明する時いつもサウナを例に例えます。身近で分かりやすいですからね。
つまりここまでサウナを例にしましたがスチームの入れる目的【ボリュームを最大限にする】というのは生地内に一気に熱を伝えるということなんです。
艶を出したいのでスチーム入れます。???
スチームの目的についてたまにこのような事を言う方がいます。
パンの表面に艶が出るのは目的ではなくて結果として起こる現象なので間違えてはいけません。
艶やかな表面を出したいなら焼き上がった後にショートニングでも塗っとけばよろしい。
前スチーム、後スチーム
これはパン屋さんで使われる言葉になるでしょうか・・・家庭では無視して大丈夫です。レシピを見ているとたまに前スチーム入れてください。とか後スチームとか書いてある場合があります。これはオーブンの作りが関係しています。オーブンの扉が奥に開くのか手前に開くのかで蒸気の抜け方が変わるからです。意味もなく前スチームをぶっ放している人を見かけますが何やってんだろうなって思います。笑
家庭でスチームを入れる場合
私もスチーム機能のついているオーブンを購入し使ってみましたが正直使い物にならないレベルでした。
中には霧吹きを使って生地を入れる時にシュっシュッしている人もいると思います。と言うかほとんどの人はそうだと思います。
はっきり言ってお勧めしません。
なぜか?
まず本来の目的である生地内にも高温を素早く伝えると言うのが霧吹きでは不十分です。
また霧吹きをオーブンの内側にかけ続けるとおそらくですが壊れると思います。程度によりますが。
フランスパンや他のハードパンを焼く際今では当たり前のように霧吹きを使っている動画を見ますが私なら絶対にやりません。
ではどのように焼けば良いでしょうか?
それは予熱時に違う鉄板も一緒に入れておき生地を入れたらそのもう一方の鉄板に熱湯を注ぐやり方です。
もっと言うと鉄板の上に石かなまりをゴロゴロ置いておくのがベストです。釣具屋さんに行けばオモリ用の鉛が売っていますのでそう言ったものがいいでしょう。ここで行いたいのはいかに多くの蒸気を発生させるかということです。そのために熱してある部分の表面積をなるべく多く作ることが好ましいです。生地を入れ素早く熱湯を注ぎ、すぐに扉を閉める!こうする事できちんとスチームが入ります。
くれぐれも火傷には注意してください!!
スチームを入れ忘れてしまった・・・
残念ながらカバーする方法はありません。パン粉にするか、パングラタンにするか、いずれにせよ失敗になります。
スチームを入れ忘れると、また少なかった時の症状が
・ボリュームが出なく変なところが割れてしまう。
・色付きがマダラでマットな焼き上がり
・クープが綺麗に開かない
よく見かけるのがクープを入れた別の場所が割れている状況です。一概にスチームのせいとは言い切れないのですが要因の一つ、疑ってはいいと思います。
スチームの有無
冒頭に食パンや菓子パン惣菜パンはスチーム不必要的なことを書きましたが、もちろん入れても面白いパンになります。これは以前の記事で書いた製法による新商品の考え方ですね。
普段やらないことに新しいことを挑戦してみるというのは大切なことです。
食パンの生地や菓子パンの生地にスチームを入れるとムチムチとした食感になります。多分日本人の好きな食感だと思います。さらに思いっきりスチームを入れると蒸されたような状態になるので皮の部分がおまんじゅうの皮みたいになります。これはこれで結構美味しいです!!
スチームを入れる入れないでは商品価値が大きく変わってきます。個人的には別にスチームを使わないフランスパンが売られていてもいいと思います。ただしそこに商品価値がつくかどうかは別の問題です。
クープの模様、スチーム、これらは先の職人たちがいかに価値を高めるかという結果だと思っています。
どうせ作るなら、大切なひとに食べてもらうなら、自分の技術の上達のためにどうせならいいものを作りたいですよね。蒸気一つでこんなにも変わるということを覚えておいてもらえればと思います。
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