というわけで今回はパン屋における時間の考え方を記事にします!!
そもそもこの働き方でいいの?パン屋を始めたいんだけど生産性の基準がわからない・・現場は職人に任せっきりで何となく効率悪い気がするけど言い出せない・・・何で朝から晩まで働いているのに赤字なんだー!!
という方。是非この記事を読んで基本の部分を理解してください。そしたら大体の問題は片付くと思います。売れる売れないは味はもちろんですが、ブランド力、見せ方、地域性など様々な要因が絡んでくるので今回の記事をベースに上乗せで考えていく必要があります。これから店を切り盛りするシェフも必ずわかっていないといけないことですのでパン作りと並行して覚えていきましょう!!スーシェフの人が理解したらすぐにシェフへの道が待っていると思います。
手間をかければいいということでもない
これはあくまでも私の個人的な意見になりますが、一つ一つ全て手作業でやり尚且つ従業員の暮らしも守ると言った場合(もちろん自分自身も)今の労働環境だとかなり難しいと思います。
なぜなら手作業=手間がかかる、これと効率化は相反しているからです。
もちろん手間のかかることを否定しているわけではありません。趣味の延長上で自分の好きな時間にパンを作り本当に時間をかけて商売するというのならこのやり方も全然ありだと思います。
今回話したいのはある程度商業的な考えを持って、繁盛店あるいはチェーンベーカリーを想定して話をします。
カレーパンのフィリングはお店のオリジナルなのでルーから仕込んでいます。
アンパンにこだわりがあり、あんこから炊いています。
このようにお店の顔となる商品を極限まで極めて突き進むのは手間をかける価値があると思います。
しかし中には売れてないけどたまにくるお客様のために終売にできない手間のかかる商品も存在しているはずです。(しかもこういう商品に限って安価だったりする)
手間というのはかけたから売れるというものではありません。その手間がお客様から見て価値がないと購入まで結びつかないんです。
例えばクロワッサン
一つのクロワッサンは配合に気を使っていて、折り込みに2日かけ、1日かけて休ませ完成まで3日間かかるクロワッサンなんです。そのため水和がしっかりしているんで外はパリパリ中はもっちりに仕上がっています!というクロワッサンと、エシレバター使用!!最高級クロワッサン!これだとどちらが買いたくなるでしょうか?これだけ手間をかけている、こんだけ愛情を注いで作っているというのはヘタをすると職人のエゴになりかねません。クロワッサンの例でいうときっと職人は3日間かけたクロワッサンを選びお客様はエシレバタークロワッサンを選ぶと思います。(全員が全員ではないと思いますが・・)なぜか?お客様は3日間かかる手間の凄さがわからないからです。それでも自分の思いを込めた商品を作りたいという人は売り方を変えないとダメです。72時間クロワッサン、初の食感!!くらい衝撃を与えれば効果はあるかもしれません。
話が逸れ売り方の話になってしまいましたが、私の言いたいのは時間のかけどころを間違えないようにしようということです。エシレバターが原価的に高いと言っても72時間かけてつくるクロワッサンよりは遥かに安価です。一番高いのは人件費だということを再認識してそこをいかにコスパをよくするか?このことをしっかりと理解しましょう。
ただしこういう話をすると必ず行き過ぎた考え方を持って会社に言いにくるスタッフが出てきます。こっちのほうが効率よかったんで変えました。とか、途中の工程を省いて効率化をはかりましたとか・・意見が出てくることはいいことなんですが、芯の部分をずらしてしまうと商品自体ひいてはお店自体の価値が下がることもありますので、必ず精査してから実行しましょう。勝手にやらせるのは❌
原価と人件費をしっかり出す
原価計算はしっかりしているけど人件費は月毎あるいは週毎にしか追っていない。こういうお店はたくさんあります。そこでしっかりと一つ一つの商品にかかる人件費も見ていきましょう。
- 前処理
- 計量
- 仕込み
- 分割丸目
- 成形
- 焼成
- 冷却・包装
このくらいの項目に分けそれぞれの商品でどのくらいの時間がかかっているか調べます。かかる時間というのは人の手がかかった時間です。機械が回っていたり窯の中に入っている時間はカウントしません。
例えばアンパンを40個作ると想定しましょう。
前処理→なし
計量→5分
仕込み→2分
分割・丸目→3分
成形→7分
焼成→2分
冷却・包装→なし
この場合トータルでかかる時間が19分。40個作っているので1個あたり2.1分かかっていることになります。これを時給で換算すると1個あたりの人件費が出てきます。
時給換算はざっくりでいいので社員なら1500円、バイトなら1100円くらいで見ておけば大丈夫ではないでしょうか?福利厚生を含めると平均してこのくらいの額になっていると思います。(もうちょっと高いかな?)
2.1分は社員だと52.5円、バイトだと38.5円になります。これを全商品やっていくと見えていなかったものがしっかりと見えてきます。え・・・この商品、人件費考えたら赤字じゃない?とかこの商品売れていてこの人件費のかかり方だったら機械導入しようかな?とか
つまり手間はお金!しっかりと売価に反映させていかないと原価ベースだけで考えると痛い目を見ます。
昔ある方に1手間5円なんていう何の根拠もないことを言われましたが意外と理にかなっているのかなあと最近思います。笑
1時間でどのくらい生産できるのか?
生産性に関していろいろな指標があります。売り上げから見るもの、生産金額から見るもの、粗利益からみるもの・・・
今回は単純に生産金額から見た場合で話を進めて行きます。生産金額なので売れても売れなくても作った分だけ数字が反映されるのでそこは間違えないようにしてください。
パン屋さんの場合健康的な店で8000円くらい優秀なところで10000円くらいです。
ここを下回ってくると今度はお給料がどんどん安くなってきます。お給料あげてほしい!何であがらないんだという方はここをしっかり見てください。
飲食店で原価と人件費の比率は合わせて60%前後と言われています。原価はおそらく25%から30%の間なので人件費は30%から35%に収めるのが理想的です。この人件費はもちろん販売員さんの分も含めたものなので製造では17%から18%くらいに抑えたいです。
ここで先程の時間あたりの生産性を見て行きましょう。1時間8000円作れるとすると8時間で64000円分のパンが作れることになります。もちろんこの他にも売り上げにはドリンクやら物販もあるかもしれませんがとりあえずパンだけという話の中にします。64000円の売り上げの17%は10880円です。これを時給(1500円)で割り込むと7.2時間しか使えません・・・・・
え?まじですか?
そうなんです、今回の仮定した話では仮に作った分全て売れたとしても製造のスタッフは7.2時間しか働くことができません。できませんというのは大袈裟かもしれませんが、その分原価を下げるかしないと利益が圧迫されてしまいます。
こういう背景があるのでパン屋さんは低賃金、ブラックな労働がチラつくんです。今回は時給1500円で計算しているので低賃金ならこの条件でクリアしていることも出てきます。また、人数をかければ効率が良くなるので今回の考え方が当てはまらないケースもあるでしょう。しかし基本的にこういった考え方を持ってしっかりと生産性と手間について考えていかなければいつまで経っても何も変わらないんです。
理想と現実しっかり向き合って行きましょう
自分のこだわりを追求することは大変素晴らしいことですが上に書いた通りしっかりと現実を見ないとお店自体が無くなりかねません。頑張ったら頑張った分だけご褒美をもらいたいというのはもちろんそうなんですが、頑張る方向を間違えると逆に足を引っ張るだけになってしまいます。
皆さんの周りにとんでもなく労働してて成果が上がっていない人いませんか?
私はパン屋は夢のある職業にしたいし、胸を張って自慢できる職業だと思っています。少しでもパン業界が明るく職人さんたちが笑顔になれる職種になりますように!!
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