シェフ、チーフ、店長など様々な呼び方があると思いますがその店の責任者としてやらなくてはいけないことの優先順位を説明いたします。新米シェフやいろいろな仕事を振られてパニックになっているシェフの方はこの記事を読んで一度整理してみると良いと思います。
シェフの一番の仕事
ずばり『自分の代わりを作る』です!!
人によってもちろんいろんな意見がありますが、私はこれこそが会社、または個人にとって一番重要なことだと思っています。
自分の代わりを作るということは個人にとっては
- 代わりができる事によって自分がさらに上のステージに行ける
- 自分の考え方、技術を持つものが増えるので全体的なクオリティの上昇
- 自分が1から10まで動く必要がなくなる
ということが挙げられます。自分の代わりを作るということは二番手を育成すると言うことと同意義なのでやったほうがいい!ではなく必須事項となります。二番手の存在というのは非常に重要で、その店、会社、組織の良し悪しは二番手で決まると私は思っています。
よく見かけるケースでシェフだけがしゃかりきになってあまりいい結果が出せないということがあります。もちろんシェフになるくらいなので個人能力は高いでしょうがこれだとシェフ不在になった時に戦力がガタ落ちします。以前にパン作りがうまくなる方法にも書きましたが一度成功するとかその時だけ良いという刹那的な考え方はうまくいっているとは言えません。シェフ不在時にミスが連発してお客様に迷惑がかかるようでは全く組織として機能していないのです。
こういうケースに陥っている場合はまずスタッフ全員と個人面談をしてそのスタッフの特性を知りましょう。二番手になるスタッフと言うのは技術力が優れているとか知識があるとかではなくバランス感覚に優れているスタッフを選びましょう。技術や知識は後からつけていけます。
一番大切なことは『どれだけ仕事を他のスタッフに渡せるか』です。
自分がシェフになったから、なんでもやらないといけないと言うのは間違った考え方で優秀なシェフは自分の仕事を周りにどんどん渡して環境を活性化させています。
あなたは一番早く出勤して一番遅くまで仕事していませんか??
コミュニケーション
シェフとして数字を見ていかないといけないのは当然なのですが優先順位はこちらの方が上です。
パン作りは(ここではある程度生産量があることを仮定しています)一人ではできません。もちろん個人店や趣味で作る場合は話が別ですが、自分以外のスタッフとチームとして存在する限りコミュニケーションというのはとても大きな意味を持ちます。一匹狼で組織を回すのはあまりに非効率ですし、退職者を多くだす原因にもなりかねません。コミュニケーションとるのが苦手な人は必須スキルになるので毎日最低でも一人一人のスタッフと会話をするようにしましょう。どんなにくだらない内容でもいいんです。しっかり相手の言っている事に耳を傾けどんなことを思っているのかサインを見落とさないように努力していきましょう。
また新入社員と接する時は特に敏感になる必要があります。定期的な個人面談は必須ですし注意するにしても次に繋がるように促していかないと即退職します。これは顔色を伺って仕事をすると言う事ではなくそのスタッフが何に困っているかの根っこを見つけてあげる必要がある、と言う事です。
1日の流れの中で失敗することが起きるのは大体コミュニケーション不足からです。常に声をかけ合える環境を作りましょう。スタッフの趣味や誕生日、最近あった出来事などは話が広がるきっかけになるのでまだ知らない人は積極的に話してみてはどうでしょうか?
ロスと生産性
会社からは人件費を削れ、現場からは人を増やして欲しいと言われシェフは毎日ストレスと戦っていると思います。大体こう言う場合無駄な生産をしていることが多いです。会社から人件費が多いと言うのは当然月々の数字を見て判断されています。一方で現場で人が足りない、みんな疲弊していると言うのは体感である場合が多いです。シェフである以上数字で答えを出せないと何を言っても会社は取り合ってくれません。まずは自店舗の生産をしっかり見直しましょう。無駄なオペレーションはないか、無駄に商品を作っていないかです。その上で時間当たりの生産性をしっかりと見ていきましょう。おそらく会社毎に指標が違うと思いますがパン屋での生産性なら時間あたり1万円から8千円と言われています。そしてその生産性を達成するにはどうしなければいけないのかを考えなくてはいけません。無理だ、出来ないと言うのは簡単ですがそれでは新しい事が何も始まりません。商品を削って効率を求めるのか、売り上げを伸ばして分母を大きくするのか。ほとんど売れないのにわざわざ手間をかけて作っているものありませんか?店の顔になる商品だからといって効率の悪いことしていませんか?
ロス(売れ残ったもの)は一番管理しなくてはいけないものです。商品原価、人件費どちらにも悪影響にしかならないからです。この会話をすると必ず出てくる話が、クローズ近くに商品がないとお客様が来なくなると言う話になりますがそこをどう見せるのかもシェフの仕事だと思います。次の日まで持ち越せる商品、あるいは販売期限がある商品を揃える、または開発する必要があります。また、稀に無茶苦茶なオーダーをかけてくる販売スタッフ、本社スタッフがいますがその場合きちんと責任の所在を明らかにしておきましょう。でないと無駄なものをたくさん作る→人手がかかる→あんまり売れなかった→材料費、人件費の無駄→シェフが叩かれるという最悪の結果になります。シェフとして責任を持てないならやるべきではないのです。
人件費
もしその店の人事採用権を持っていないならこの項目は関係ないです。なぜなら人件費のコントロールをシェフがすることはできないからです。当然1日の働く適正人数と言うのは考える必要がありますが微たるものでしょう。今回のコロナの影響でも表面化しましたが正社員で多く構成されているのはあまりにもリスクが高いです。これからはパートアルバイトをいかにうまく使っていけるかにかかっています。同一労働同一賃金で働き方は一気に変わっていきます。長く会社にいても仕事ができなければどんどん仕事がなくなっていきます。時間で局部的に働いてくれるパートアルバイトのスタッフをいかにうまく使うかが今後の鍵になるでしょうし、取り合いになると思います。(正社員はそれほどいらない)
月間の予算が出されたらそれに応じて1日に働く適正人数を割り出しスポットで最高のパフォーマンスができる体制を整えましょう。当然ですができるパートアルバイトのスタッフにはそれ相応の対価が必要なので会社にしっかりと交渉して絶対に離れないようにするべきです。
まとめ
はっきり言ってシェフしかできない仕事と言うのは一番最初に書いた自分の代わりを作ると言うことだけです。
他の項目は実はシェフでなくても出来ることであり、言い換えればスタッフに振れる仕事なのです。
私の経験上シェフというのは現場に入り浸りでは機能しなく、逆に腕組みして立っているだけでもうまくいきません。会社からシェフの仕事は管理することだ!!みたいに言われると勘違いして現場に入らない人がいますがそれもスタッフからの信用を無くすだけなのでやめたほうがいいです。例え本質の仕事があるにせよそこのバランスをうまく取れる人がスタッフからの信用を得て成功するシェフになれるのだと思います。
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