今回は素朴な疑問にして複雑なお題でもある発酵に着目します。今回はなるべく簡単にわかりやすく書きますがこれからパンを作る人、初心者は必修の科目となりますので何度も読んで理解しましょう。またなぜ膨らむか?が分かれば膨らまない理由もわかります。家でパンを作って失敗しないためにも理論をきちんと勉強しましょう!
どうして生地は膨らむのか?
- 酵母が糖分を食べて炭酸ガスなどを発生させる
- このガスをグルテンの膜が包み込む
- 生地に熱を加えると中の空気が膨張してその状態で固まる
酵母が糖分を餌にするというのは何となく聞いたことある方もいらっしゃるのではないでしょうか?これは正確に言うと酵母が糖分を分解して炭酸ガスとアルコールなどを発生させているのです。そしてイースト菌というのはこの作業のスペシャリストだと思ってもらえればいいです。膨らませるプロ!それがイースト菌。一方自家製酵母は発生させる炭酸ガスが少ないけどそれと同時にできる複雑なアロマ(エステル)に長けているといえます。
じゃあイースト菌を大量に入れたら絶対膨らむか?というとそうではありません。ガスが発生してもそれを包み込む、保持してくれる器が無いとどこかに飛んでいってしいます。炭酸のジュースだって一度開けたらどんどん気が抜けて行きますよね?それと同じです。
また気体は温めると膨張します。生地から焼く工程を経てパンになる時、最後の膨張がこの焼く工程ですね。ですので焼く温度によっても膨らみ方は変わってきます。
膨らまない原因
なぜ膨らむのかわかったところで今度は膨らまない原因を考えてみましょう!上記のことを分解して考えれば理由が分かってきます。
- 酵母が入っていない
- 糖分が少ないのでガスが少ししか出ていない
- ガスを包み込むグルテン膜がうまくできていない
- 膨らむ邪魔をしてる奴がいる
酵母が入っていないというのはもちろんただの入れ忘れというのもありますが例えば買ってから長い期間置いとかれたイーストを使っていたとしたら、それはただの茶色の塊であって酵母ではありません。
糖分が餌になっているのでその餌がないと当然ガスも出て来なくなります。ただここで言う糖分というのはお砂糖のことではないのでフランスパンなどのハードパンでも(お砂糖入れなくても)酵母は働いてくれます。小麦の中には糖分が含まれているのでそれを利用しているんですね。補足ですが低糖質のパンというのは単にお砂糖不使用と言うわけではないんです。小麦粉に含まれている糖分が低くないと低糖質とは言えません。(もちろん他の糖分も低くないとダメ)話を戻しますと酵母の餌である糖分を小麦粉から取る時はすぐに摂取できないので分解するまでに時間がかかります。なのでもしかしたら発酵していないのではなく、発酵が遅いのを待てずにどんどん先に進んでいる(作業が)可能性があります。これがよく言われる発酵の見極め方と言うもので間違って進んでしまうと膨らんでいないパンができてしまいます。
包容力に定評のあるグルテンさん。ここの問題が一番つまづきやすい所です。
グルテンは粉と水を合わせて捏ねる(こねる)とできるタンパク質でパン生地における骨格の役割を果たしています。そしてこの捏ね方によって骨格の出来方が大きく変わってきます。
こちらの記事でも触れていますので合わせて読んでみてください↓
今回は風船で例えてみましょう。
もし水枕のゴムをパンパンになるまで息を入れてと言われたらできると思いますか?
逆にどんなものでもいいからゴム風船を早く膨らませてと言ったらあなたはどんな風船を思い浮かべるでしょうか?
多くの人は水風船のようなゴムが薄くて小さなものを想像したと思います。
グルテンの膜もそれと同じように考えてみましょう。膜が薄く伸びやすいものができていれば膨らみやすいのです。逆に厚い膜だったり伸びないとガスが発生しても表面を張らせる程度で終わってしまいます。
ではどうやってグルテンの膜を薄く伸びやすくするのでしょうか?
答えはミキシングと時間です。ミキシング=捏ねるをしていくとグルテンは複雑に絡み合って強くしなやかなものになって行きます。これが薄くても柔軟な膜の元になるのです。注意しなければいけないのが捏ねすぎると逆に脆くなってしまいます。が手で捏ねていたりホームベーカリーで捏ねすぎと言うことはまずありません。家のパン作りで失敗の原因が膨らまないことだとしたら多くの人は捏ね不足だと私は思います。最初は生地が出来ているかチェックすることすら困難だと思います。パンの専門学校に行った子でさえ捏ねあがりの生地をチェックすことはほぼ無理です。私の経験になってしまいますが新人の子で出来た子を見たことありません。当然趣味で作っている方が出来ているのも見たことありません。それほど生地の出来上がりを見極めることは難しいんです。因みにプロでも出来ていない人が沢山います。自分でお店を持っていてもです。やけに大きさが小さくてずっしりしているパンばかり置いているところはありませんか?それを狙ってやっているのならいいのですが、風味や味にこだわるばかり基礎的なことが疎かになっていては本末転倒です。
じゃあ初めのうちはどうしたらいいの?
まず家で作るときはオーバー気味に捏ねてしまっていいです。(ホームベーカリーでも)ただしミキサー使うときはダメですよ。そしてもう一つこんな時にこそ役に立つのが
パンチ!!
この生地の最後にも書きましたがパンチを入れることによって生地を修正することができます。(記事自体は少し難しいのでわからなかったらガス抜きの記事を読んでください)
もし捏ねれているか不安なときは最初の発酵時間の2/3くらいの所でパンチを入れてみましょう。その後は様子を見つつ指を生地に押し込んで出来た穴が残った状態で少し戻るくらいになっていたら分割の工程に進めます。
どんな本やネットの記事、YouTubeを見てもこんなことを勧める人はいないと思います。だからこそ長年膨らみ不足で困っている人がいたらチャレンジしてみてください。
邪魔する奴ら
酵母の働きを邪魔する材料と言ったら何でしょうか?
これの答えは範囲的にすごく難しい部分でもありますが、粉と水以外全て邪魔すると私は思っています。
下手するとこの二つも場合によっては邪魔しますので、酵母以外というのが本当の正解ですかね。
その中でも酵母殺しがいますのでそこは要注意!其奴は塩であります。
何とパンの定義は入っていたあの材料が酵母の天敵なんです。
考えてもみてください。酵母って菌ですからね・・・塩に弱そうな感じしますよね。
なので間違って塩を多めに入れたり、捏ねる前に酵母と塩を直接触れ合わせておくと酵母はどんどん死滅して行きますので注意しましょう。
補足で邪魔はしてないですがライ麦粉はそもそもグルテンができないので生地中のガスを保持するのが困難です!
まとめ
なぜ生地は膨らむかというのは色々な現象が組み合わさって起きています。ですので一つずつ原因を潰していけば必ず改善して行きます。問題なのはいろんなやり方を試した時、よく分からないけど改善してしまった。というのが一番厄介です。成功の理由がわからないから成功を持続させるのが困難になるからです。
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